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A Tale of Two Islands

東京大学法学部から英国のシェフィールド大学へ一年間交換留学。現地での思いを綴ります。関心は国際政治と東アジア。

天気と英語と雑感

今学期の後半は畳み掛けるように日常が過ぎていき、早いものでもう留学から三ヶ月が経ちました!

先日の最後の講義で今学期受けた講義も全て終わり、一緒に勉強したこの人達と今後会うことも少ないのだろうなと思うと少しさびしい気持ちになります。本当は今学期の総括的な投稿をしたかったのですが、エッセイやら飲み会やら旅行準備やらでバタバタしたのでまた落ち着いたときに整理し*1、今回はとりとめもなく思いついたことを三点程書きます。天気と英語とエッセイの雑感です。

 

天気と英語

先日、東京で54年ぶりの降雪が11月に観測されたとのニュースで日本が盛り上がっていましたが、その頃のシェフィールドも雪は降らないものの風と雨で体感的には極めて寒く感じられました。最高気温7度、最低気温3度前後といったところでしょうか。ちょうどイギリスに来た頃、BBCが今年は長くて寒い冬が訪れそう、といったニュースが配信されていたのを思い出します*2。ちょうどその頃(11月末)からエッセイ期間に入り始め、寒さとエッセイで人々は篭りがちのように見え、講義やゼミに行っても1/3程度がサボっているという状況でした。日本以外の国の大学生は真面目だって言ってた人だれだ。

折角これだけ寒いのだから雪が降れば良いのに*3、とは思うものの、とにかくイギリスの気候の良くない部分は冬に集結するらしい。

ただ一方で、イギリスに来たばかりの9月10月は、(今年の東京の夏が曇りの多かったこととも相まって)聞いていたほど天気が悪いわけでもなく普通に晴れてるやん、とある意味期待を裏切られたように感じていたので、ここにきて漸く悪天候*4で有名なイギリスに来たという実感が湧いてきたという解釈ができないわけでないです。

 

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晴れた日の大学近くの公園。早朝の装いだが真昼の12時43分に撮影した。

 

天気という困難な話題ついでにもう一つ困難な話をしておくと、留学から三ヶ月、講義一学期分が終わったというのにも関わらず、自分が想像していた英語の伸びからは程遠いということも、天気と並んで悩みの一つ*5です。当たり前ではあるけれど受動的では全く成長しないし、日本で勉強していたように地道に自学しないといけないと痛感しています(が、サボってしまっていて人は変わらない)。

 

ふと思ったこと

 

ちょうど先週と今週にかけては、「東アジアの歴史と記憶」という講義のエッセイを書いておりました。日本の戦時下における知識人たちの"life narrative"が、回顧録(memoir)、オーラル・ヒストリー、そして史料・文献・著作から紐解く"life narrative"の三つのタイプでどのような戦時下の記述の差が見られるか、というテーマで大慌てで書いたのですが、その中で苅部直丸山眞男』(岩波新書*6と、小熊英二『生きて帰ってきた男』(同)*7の二冊を同時に読むにつれ、昨今の時勢を鑑みるに非常に興味深い感想を抱きました。

苅部は当該新書において、1930年代後半から40年代前半にかけて、日本国内の自由主義が、明治初期の近代化の歩みと比べて大幅に後退してしまっている事実に丸山が絶望し、近代意識の成長を押さえ込む日本社会の病理を戦中期の諸論文を通じて描こうとした軌跡を記しています。その中で苅部は、熱狂的に國體を信じる一般大衆・マスメディアが圧倒的に社会に蔓延し、近代国家の制度観を認識する知識人がその中で孤立するという実感を抱く丸山を描きます。この見方によれば、國體を信じる一般大衆と、近代を信じる大学人という二分法が浮かび上がってきそうです。しかし、この見方に対し、小熊の新書を読むと少し違った印象を抱きます。当時の人々は上から言われるままに生活を戦争体制へと変更していったものの、「上のほうはいろいろ言ってくるが、下へ行くほど冷めていた」(Kindle版、位置No.465)という回想にあるように、思想的な浸透には至っていなかったように思われます。地下鉄半蔵門駅に到着すると、車掌が「ただいま宮城前でございます」というアナウンスをしても、1940年当初はみんなお辞儀していたのが、段々と形式的なことに飽々として誰もお辞儀などしなくなっていったというのも、一般大衆の「実態」のように思われます。このように見ると、上記の丸山の二分法は、正確には、近代化が前進しようと後退しようと日々の生活で精一杯な一般大衆と、それに対して一人近代化の後退を訴える知識人という分け方のほうが正しかったように思われます。そしてそのような忙しい一般大衆の中にも、国家の軍事体制化に冷めた態度を持つ人もいれば、肯定的に捉える人もいるという、よりグラデーションがあったのではないかというのが、小熊の著作を読んだ感想です。

 

昨今のpost-truthと呼ばれる諸現象を語る際、知識人と一般大衆の二分法で捉える議論が多く見られます。しかし、そこで一般大衆と区分した人たちが、果たして本当に一枚岩的なのか、果たして「知識人」の側のイメージと一致しているのかは、苅部と小熊の著作の比較から見られるように注意が必要であるように思います。「反知性主義」や「ポピュリズム」など、知識人の側からの一方的かつ一枚岩的なイメージの当てはめを全面的に支持することに関しては、少なからず躊躇いを持たなくてはならないという発見を得た二冊でした。

 

今回の投稿も極めて一貫性に欠けるものとなってしまいましたが次回は余裕を持って更新するよう努めます。

ところで今から大学のサークル活動的なものでフランスにスキーしに行きます!本物のアルプスでスキーをするのは小さい頃からの夢でしたがこんなにも早くその夢が実現するとは思わなかった!

 

 

*1:それ整理せーへんやつやん、って言われそう

*2:イギリス人のクラスメイト曰く、毎年のようにBBCは今年は寒くなると報じているとのこと。

*3:別のクラスメイト曰く、雪が降ったら降ったで、今度は路面が雪に十分に対応していなかったり、あるいは不十分な公共システムのせいで路面の凍結による事故が多発してしまい、イギリスで雪が降ると危険きわまりないとのこと。やれやれですは。

*4:悪天候に加えて16時には夜のような暗さになるという日照時間もまた、イギリスの冬を悪名高いものにさせるようです。日本でも噂では聞いていたけれど、実際10時に起きたら残りの「日中」は5時間半程度しかないのでなかなかに寂しい。ちなみにこんな商品も。

*5:その他に留学の赤裸々な困難を書くとすると、寮生活も今学期後半の困難の一つでした。自炊生活や一人暮らし自体は慣れて楽しいものの、新入生が多い寮に入ったため新入生ならではの活気があり、元気なのはいいけれどキプロス人のフラットメイトが夜中3時に酔っ払って大声でフラット中の壁を叩き出したときには本当にやれやれといった気持ちでした。

*6:熱狂的丸山信者と氾濫する丸山批判の両方を退け、「本人と問答するように」(pp.15)彼の思想の軌跡を描こうとした。日本から持ってきた本にたまたままぎれていたのでエッセイに使いました笑)。以下苅部さんの敬称略。

*7:有名な本だけど読んだことなかった。小熊さんのお父さんの戦中・戦後体験を、オーラル・ヒストリーの手法を通じて整理した著作kindle神。以下敬称略。